自然治癒力をもった小宇宙人体と歯 その80  食生活と人間

 歯科では妊娠中の妊婦さんから赤ちゃん乳幼児、小学生、中学生、高校生、大学生、成人、社会人、壮年期、老人、介護を必要としている方、など人の生まれる前から亡くなるまですべての人の場面に接触します。ただ歯科医院に来院されるきっかけは虫歯や歯茎のトラブルである歯周病、また顎の痛みやお口が開かないなどの顎関節症などの何かしらの症状がでたことがきっかけとなります。今の科学では虫歯は歯の汚れからミュータンス菌が菌体外毒素を出し、その成分が酸性なため歯が溶け出すのだというものや、歯茎の中に歯周病菌が入り歯周病になること、また歯のかみあわせが狂ってしまったためにお口が開かなくなるということなどが言われていますが、実はその本当の原因には見えないかみ合わせの力が働いているのです。接触する歯の部分に食べかすは常時同じようにあるのに、接触する手前の歯は虫歯なのに後ろ側の歯は虫歯で無いということが臨床ではよくあることです。どうしてそのような差がでるのでしょうか。歯周病も同じで、歯の周りが同じように汚れているのに健全な歯と歯周病になってしまう歯があるのです。顎関節症も噛み合わせになんら問題の無いケースも増えてきています。その本当の原因のかみあわせの力を狂わせる要因として、もっと大きな視点で考えると実は本当の原因は「食」と「環境」にあるのです。
1920年代アメリカのプライス博士が世界中の部落で、そこに住む人の歯を調査した貴重な文献があります。歯医者がいない山奥の部落でも、その場でとれる物を加工をしないで食べている部族には、虫歯も歯列不正もなく健康であるのに対し、近代食を取り入れ加工食を食べるようになった部族は虫歯が多くなり顎も細く歯列不正が多くなるというデータがあります。
日本では、昭和初期の食べる物があまりなく加工食品も無い時代の方が、平均寿命は短かったかもしれませんが、肉体精神ともに健康であったのではないでしょうか。昨今、コンビニやファーストフードで便利さを追求したための弊害により、虫歯や歯周病、顎関節症がおきていると言えるかもしれません。
 そのような背景からも歯科では食事指導をさせて頂くことが多く、特に現在少子化と言われていますが妊婦になる前から食事を見直しておく必要があることをお話しなければなりません。妊娠する前からのマイナス1歳からの食生活としてはトランス脂肪酸の問題を挙げておきたいと思います。既にトランス脂肪酸の害はご存じかもしれませんが、トランス脂肪酸は蓄積性が有り、ハーバード大学の資料ではLDLコレステロールを増加させ、HDLコレステロールの減少、血栓の形成促進や妊婦で一番問題な子癇前症(妊娠中に高血圧やタンパク尿を特徴とする疾患)のリスクの上昇(トランス脂肪酸は胎盤を通過するため)、Ⅱ型の糖尿病に成りやすくなるなど、その他たくさんの問題があります。代表作はマーガリンで、今でも学校給食にもでているかもしれません。トランス脂肪酸は先進国では規制が始まっていますが、日本はまだ規制不要という立場であるようです。世界保健機関のWHOからはトランス脂肪酸を2023年までに世界の食品から一掃することを目指す段階的な戦略が発表されていますが、どんな種のことでも日本は規制が10年遅いといわれており、自主的にチェックしてなるべくそのような食品は摂らないようにしなければなりません。
 人は一度美味しい物を知ってしまうと、それを食べないでいるということは、なかなか出来ないものです。でも安価で健康を害するものを食べ続けるのは如何なものでしょうか。
加工食は食べない方がよいですし、中でもトランス脂肪酸が添加されると人は美味しいと感じてしまいます。自分たちで気をつけられることとすれば、植物油脂やショートニングなどの表示には注意し、自らが取り入れる油を正しく選択する必要があります。