【7】身体の繋がりと医療の統合  

万有引力の存在する地球では、色々な物理現象があります。例えば、滑り台の様に傾斜している台の上にボールを置くとボールは自然に転がりながら落ちていきます。また、コインを重ねるゲームでは、次々とコインを上に重ねていくのですが、当然真っ直ぐには重ねる事が出来ずに仮に右側にずれていってしまうと、次に重ねるには右側と反対側の左側にコインを積まないと倒れてしまいます。家を建て、建てた当初は家のドアはスムーズに開閉するのですが、地震で地盤が崩れたり、家の大黒柱が腐ってしまったり、その他色々な条件で家が傾いてくると、最初スムーズだったドアの開閉に歪みが発生しひっかかりが出たり、強い力で押さないと閉まらなくなります。運動会の棒倒しでは当然棒の先端をつかみ横に揺さぶると根本をつかんでゆさぶるのより、力がいらずにすぐに倒れます。砂場に割り箸をたてて周りの砂を固め、割り箸を横に何回か振ると周りの砂は少し盛り上がり、割り箸と砂との間には隙間が出来、割り箸は少し動くようになります。アスファルトに木の電柱を立てます。台風や何かで電柱が横に倒されるような力を受けると電柱とアスファルトの界面から亀裂が入り倒れようとします。庭の植木に水を遣るため水道の蛇口からホースで水をまく時、そのホースが何か障害物に曲げられてしまうと、ホースがねじれたり圧迫されたりして、いきなり水の出は悪くなります。今まで挙げたこのような事は誰がやっても普遍的に起こる物理現象です。この現象は目に見えないのですが実はこれはヒトの身体でも起きているのです。四つ足動物は身体を支える点が4つあるのでうまくバランスをとりますが、ヒトは直立してなおかつ二足歩行をするために、身体を支える支点が2つしかなく、ちょっとしたバランスの崩れが色々な不定愁訴を作ります。例えば歯のかみ合わせが悪いとどうなるかを考えてみましょう。ヒトは立っているときに頭というボーリングのボールのような重たいものを首の上にのせているのですが、かみ合わせがどちらかにずれてしまうと、いきなり身体の重心は崩れはじめ立っている事が苦痛になります。それはコインのゲームで一番上のコインをどちらかバランスの悪い方に積んだ時と同じで、コインだと既に倒れてしまっているのですが、ヒトは倒れないで筋肉で支えてしまうので、無理がかかってしまうところに痛みを感じるようになります。首が痛いとか肩が痛い、背中が痛い、腰が痛い、膝が痛い、足首が痛いという状態になるのです。そのように歯のかみ合わせが悪く身体が傾いた状態では、いくら腰が痛いと整形外科を受診されても治る事はないでしょう。これはほんの一つの例えですが、以前片山恒夫先生の講習会を受けているときに、歯科は総合病院の院長になるべき存在であるとお話があり、その当時は先生が何をおっしゃっているのかわからなかったのですが、今漸くその時の事は上記のような事をお話しされたのだと、わかるようになりました。歯科医師が過剰になったといわれていますが、実際のところ、そのような見識を持ち、全身との調和を心がける歯科医師は残念ですが数少ないのではないかと思われます。現在の医療の中で色々な病気が存在していますが、実は歯が盲点である事は間違いないのです。西洋医学では目は目医者、歯は歯医者、お腹は内科という具合に細分化されていますが、身体は一つ繋がっているという根本原理を再確認し、今こそこの細分化された医療を歯科を含めて統合的におこなわなければならない時代になってきているのではないかと考えております。