プレマらくなちゅらる通信インタビュー

歯から見える 人の体を導くもの

本誌コラムで長らく連載していただいている、ケテル齒科醫院 院長の田中先生。コラムで田中先生が繰り返し伝えているのが、人体における歯の重要性であり、目にみえないかみ合わせをも含めた、人体が本来もっている歯の機能についてです。体の重心バランスを取る要であり、栄養を取り込む最初の入口にある歯。歯の健康を考えることは、体全体の健康を考えることにつながります。今回、田中先生に、人が健康な心身を保つための要点を、改めて教えていただきました。

ケテル齒科醫院 院長/歯科医師・整体師/日本抗加齢医学会 専門医
国際個別化医療学会 認定医/杏林予防医学 細胞環境デザイン学 認定医
日本幼児脂質栄養学協会(JALNI)理事/分子整合医学美容食育協会 医療顧問
田中 利尚(たなか としなお)

東京都練馬区出身。小学校は水泳と剣道、中学校はサッカー、高校は自転車で北海道や四国まで一人旅、大学で少林寺拳法。小児喘息や膝を壊したときに、医療不信に陥った経験を活かし、今に至る。「本当に治る治療」を目指し統合医療を提供。健康は歯からを確信している。
https://keterushika.jp

歯と体は連動している

――ケテル齒科醫院ではどういった診療をおこなっているのでしょうか。

田中 歯科治療の基本である「かみあわせ」に重点を置き、歯も体の一部という考えのもと、木を見て森を見ずの治療ではなく、歯から全身を、また全身から歯を診ながら治療をしています。そのために必要な代替療法を併用し、統合医療をおこなっています。かみ合わせと体の調和を求めて歯の治療をおこなうため、姿勢が良くなったり、歪みの少ない骨格となり、不定愁訴が少なくなる方も多いです。
 
体の各部位は歯車のように連動しています。虫歯の治療によりかみ合わせが変わると、首や肩の凝り、腰や膝の痛み、目まいや耳鳴り、うつなどの精神症状といった、あらゆる体の症状を作り出してしまう可能性があります。
 
白い歯や金属を入れるような歯の治療は目に見えますが、かみ合わせに関わるあごの関節の状態は、実は目に見えません。あごが左右どちらかに大きく傾いたり変位したりするまで、その状態に気づかないことが多いのです。そこまでになるのは、かなり多くの範囲の歯の治療をされている場合や、過去に矯正治療をされた方などが多いです。当医院ではそういった目に見えないところについても患者さんの状況に応じて説明をしています。

――歯と体が連動しているということは、歯が原因で体に症状が出るのとは逆に、体の不調が原因で歯に症状が出ることもありますか?

田中 そういったこともあります。歯は体(首)における自転車の補助輪のような役割を担っています。体(首)が倒れそうなとき、それ以上倒れないように歯が止めてくれているのです。生活習慣のなかで左右差のある動きや不良姿勢が続くと、重心バランスなどに影響がでてきます。交通事故などによるむち打ちのような外傷や手術の影響、骨折などで体のバランスが崩れることもあります。そのままだと体が傾いてしまうのを歯が止めてバランスをとってくれているのですが、そのような歯は上と下の歯でかみしめたりすることで圧力がかかり、虫歯になりやすいのです。
 
何度治療しても同じ場所が虫歯や歯周病、知覚過敏などになる人は、体が悲鳴をあげている状態なのかもしれません。連載コラムでも紹介したことがある、歯と体の関係について記した『虫歯からはじまる全身の病気』という書籍があるのですが、虫歯を作ってはいけないのです。
 
「歯」という字は日本人の主食の「米」を「お口」に「止める」と書き、歯で米をすりつぶす様を連想させます。一方、「齒」は「お口」にある「かみあわせの水平面」と「舌の位置」が「人の上半身と下半身・右半身と左半身」を「止める」と書きます。体を止めているのは齒だということを、昔の人は知っていたのです。
 
小さいころ、姿勢を正しなさいとよく言われましたが、歯のかみ合わせが成立する16~18才ごろまでは、特に姿勢を正す必要があります。最近は、電気製品の多用や食生活の変化により、体が傾いたまま成長してしまう人が多く見られます。かみ合わせが歯止めとなるのですから、体が傾いたまま上下の歯がかみ合ってしまうと、生涯それを引きずり、病気になりやすい体を作ってしまいます。

歯科医だからこそできること

――電気製品の使用や食生活も、歯のかみ合わせや体の重心バランスに影響するんですね。

田中 環境はとても大切です。電気製品、また腕時計なども、体の筋肉を動かす電気信号に誤作動を与えることがあります。さらに、最近利用され始めた5Gの影響も懸念しています。生活が便利になるほど体には悪影響になるように思います。食生活も同様です。白砂糖をはじめとする加工食品など、人工的に作られた便利な食品ほど体には悪影響です。
 
そもそも体に不具合が出るのは、その組織に血液が流れていないか、血液が流れていても、その血液が汚れていることが原因だと考えられます。血液を流すためには、かみ合わせを正し、骨格構造を正すことが効果的ですが、血液をきれいにするには、腸をきれいにする必要があります。それならば、歪みの解放と食事の両方からアプローチすれば、体は加速して良くなっていくはずと考え、最近は栄養学的なアプローチも治療に取り入れています。
 
かみ合わせ、体の重心バランス、体を構成する37兆個の細胞の状態も良くする。そのために、歯科・整体・食事を組み合わせた統合医療をおこなっています。

――歯科医の視点から見た、良い食事とはどのようなものでしょうか?

田中 植物性主体の全体食、plant based whole foodsが基本だと考えています。食生活と歯の関係についての調査で有名な歯科医として、アメリカのウェストン・A・プライス博士がいます。プライス博士は、食生活が歯へおよぼす影響について、世界の国々を回り調べました。この調査は書籍になり、『食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食 その身体への驚くべき影響』という日本語版の書籍も出ています。調査では、伝統的な食生活においては虫歯や歯並びの悪い人がいないのに、加工食品などの近代的な食生活になると、急に虫歯や歯並びが悪い人が増えるということがいわれています。
 
実際、乳幼児の検診では、あごの細いお子さんがどんどん増えています。あごが細いから、歯と歯の間にすき間があるはずの乳歯が、密集して生えてしまう。すると永久歯が生えるときに歯並びが悪くなったり、かみ合わせが悪くなったりしてしまいます。
 
こういった食生活の歯に対する影響について書かれた本を日本語で訳されたのが、片山恒夫先生です。私は片山先生から直接学んだことがあるのですが、片山先生はかつて「総合病院の医院長は歯科医がやるべき」とおっしゃっていました。当時はよくわかっていませんでしたが、今はその意味がよくわかります。それくらい、歯の状態というのは全身と影響し合うものなのです。

――そもそも、田中先生が歯科医になろうと思ったのはなにがきっかけだったんですか?

田中 父方、母方ともに祖父の代から歯科医だったので、自然と自分も歯科医になろうと考えていました。一時期、医師になろうと考えたこともあったのですが、今考えると、ちょっと言いすぎかもしれませんが、歯科医のほうが体全体に関わることができているのではないかと思います。また、歯科医は、妊婦さんから新生児、乳幼児、子どもから大人、高齢者まですべての年代に関わる機会があります。そうやってたくさんの人を診ていると、歯や体の不具合につながりが見えてきます。

たった5分の通電により体の各組織の状態が把握できる機械や姿勢分析器などがある

――保険診療の治療をおこなうだけでなく、かみ合わせや整体、栄養学など、歯への影響について広く考え始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

田中 大学卒業後、歯科治療に関する勉強会に積極的に参加したり、国内外のさまざまな先生に学んだりするなかで、歯と体の関係や、生活習慣や食生活が歯に及ぼす影響について知るようになりました。私は東京出身で、最初は銀座で歯科医として働いていたのですが、その後、母方の実家がある秋田で、歯科医の祖父を手伝いながら歯科医院を開業し、19年間秋田にいました。秋田では東京ほど情報が入らないのではないかと言われることもありましたが、逆に歯科医界の動きに敏感になりましたし、秋田から東京に行くのも海外に行くのも大して変わらないと、海外の講習会や先生のところに積極的に学びに行くようになりました。聞くだけと実際に見るのとでは違うもので、なんでも自分のフィルターを通して感じてみたいという気持ちがありました。
 
そうやって知識や体験を重ねながら、秋田の歯科医院では、基本的に保険診療を中心におこなっていました。しかし、歯という部分だけを診ることによって歯は治るのですが、よくよく患者さんに伺ってみると、治療すればするほど体に不具合が出てくる状態の患者さんにも出会うことがありました。そういった患者さんを診るたびに、西洋医学だけで対応することの限界を感じ、もっときちんと対応がしたいと考えるようになりました。

患者さんとの会話を大切にしている田中先生。一人ひとり違う状況に応じた治療をおこなっていく

――秋田ではなく、東京で新たにケテル齒科醫院を開かれたきっかけはなんだったのでしょうか?

田中 秋田の歯科医院は順調だったものの、保険診療ではできないホリスティックな診療をしたい、医科と歯科の間の落とし穴にはまってしまい苦しんでいる、たくさんの方が通いやすい東京で挑戦してみたいという気持ちがありました。しかし、歯科医院というのは地域に密着したもので、場所を移すのはリスクが大きく、なかなか踏み切れませんでした。
 
そこで背中を押されることになったのが、2011年の3・11大震災でした。多くの命が一瞬で失われてしまう状況を目にして、自分には命があるのになにを怖がっているんだろうと、迷っていた心が再起動されるような、気づきの瞬間があり、東京に出ることを決めました。そして6年前、ケテル齒科醫院を開くことになりました。
 
人生には、そういったタイミングがあると感じています。実は以前、ホノルルマラソンに出たときにも、同じような経験をしました。そのとき、10キロメートルくらいですでに苦しくて止めようかと考えていたのですが、ふと側を見ると、義足の男性が走っていたんです。それを見て、自分は2本の足があるのになにをやっているんだろうという気づきの瞬間があり、気持ちがフラットになり、最後まで走り切ることができたんです。東京に行くことも、このときの感覚がよみがえり、今がタイミングだと直感しました。

――これまでさまざまな患者さんを診てこられたなかで、田中先生が大切にされているのはどんなことでしょうか?

田中 当医院では、パーソナライズドメディシン(個別化医療)を大切にしています。同じ症状が出ていても、その症状の原因が同じとは限りません。そのため、患者さんと会話しながら、一人ひとりに合った治療をおこなうことが大切だと考えています。
 
また、いくら良いもので、その人に必要だと思っても、その人が望んでいなければ意味がありません。充分な説明をさせていただき、患者さんのご要望をお伺いしたうえで、最良の方法を提案させていただきたいと考えております。
 
どんな治療も愛をもって接する。これは、プレマさんが商品を通じてお客様に届けていることと一緒ではないかと思っています。私は歯科医として、その人がより良くなれる道を導いていくことができたら良いなと考えています。