【77】舞台医学

舞台医学という言葉があります。
仕事で同じ姿勢や動きをとるために、酷使した身体の部位が他の部位より壊れて痛みなどを発したりすることをいい、その業種により異なる部分に痛みや歪みが出るという特徴があります。

寝た姿勢での治療の弊害?
先日、テレビで「ひふみん」こと将棋棋士の加藤一二三九段が、前歯を入れない理由を明かしていました。
彼は前歯を入れた際に「頭の働きが止まってしまった」というのです。
花を見ても美しいと思えないなど、「感動というものがなくなってしまった」とも。
本人がそう言うのだから、間違いのない感覚と感情なのでしょう。

前歯が無いということは歯科医側からみると、とても残念なことです。
日本の歯科のレベルを現しているようで、歯科医としてはとても恥ずかしい話ですが、このことを歯科医学的に考察してみたいと思います。
ひふみんの前歯が入った状態を、直接診たわけではないのであくまでも推測になりますが、次のようなことが考えられるのではないでしょうか。
それは、上の前歯を制作して入れたときに、下顎が後ろに押された適正ではない位置で顎が固定されてしまい、脳血流が一気に下がり、脳の判断力の低下に繋がったのではないかということです。
歯科治療において、水平位という寝たままでの治療をした場合に、顎関節の動きが緩い人は、顎の位置が重力で下がってしまうことがあるのです。

そうでなくても棋士は仕事柄、正座をして下を向く姿勢を長時間取ることが多いので、下の顎の位置が前に出たかったのを、その上の前歯が邪魔をする位置に作られたために、不快で仕方がなかったのではないかとも考えられます。
そのまま放置すると当然脳内の血流が弱まり、脳梗塞をおこしやすかったり、精神的に落ち込み鬱になりやすかったりという状態であったといえるかもしれません。
歯は綺麗に入れた方がよいですが、かみ合わせが適正でないと全身の色々な病気の種や症状を作ってしまうのです。
見た目も大切ですが、見えない部分にもっと大切な要素が眠っています。

また加藤氏は、前歯を入れた時期に、バイオリニストの方が「歯を入れたらバイオリンの演奏ができなくなったので歯を取ってもらった」という自身と似たような体験記を読み、これは同じだと判断されたらしいのです。
バイオリニストは、バイオリンを弾く際に、顎の左下にバイオリンを挟むような姿勢になるので、歯の治療時には、首の位置や身体の使い方が左右対称でないところを考慮しなければ、上記のようなことがおきてしまうので、注意する必要があるのです。
どのような症例でも、その人の今の生活環境に入り込まなければ、適正な治療はできません。
患者さん側のなかには、そんなことは関係なく歯だけ治してくれれば良いという方もいらっしゃるかもしれませんが、とても大切なことなのです。

歯は首や全身に影響する
重い頭蓋骨を支えている首と歯は、自転車が倒れないように支えている補助輪のようなもの。
かみ合わせは歯だけの問題ではなく、首との対応関係があり全身と繋がっているのです。
しっかり歯を治療することは健康を得る第一歩に間違いありませんし、もしかしたら今お持ちの症状は、歯が原因によるものかもしれません。
先日の学会でも、アメリカの教授が「がん」も歯科の慢性的な感染により免疫が下がることが原因だとお話しされていました。
すべての病気を治すためには、まず一番先に歯の治療が必要なのです。

当医院も早いもので、8月1日で西麻布に歯科医院を開業して5年目に入りました。
一人ひとりにお時間を用意し、じっくりご説明して、お互いが納得のいく治療を提供できるように努めていきたいと思っております。