食生活と身体の退化

「食生活と身体の退化」 WESTON A PRICE著 片山恒夫訳 をご紹介します。

– 序文紹介
未開の人間、つまり原始的な条件のもとで生活をいとなんだでいる民族が、一般的にいってすばらしく良い歯をしているといわれていることはいまに始まったことではない。現にこの事実は、旅行者や探偵家や科学者たちが現存する未開種族を折りにふれ観察したことに基づいて記録されているところでもあり、最近あるいはずっと以前に滅亡した未開人の人骨コレクションの中に残っている歯の研究によって、前者に比べてより適切な形で資料が提出されていることからも裏付けられている。また、文明が非常に進歩した社会に住む人々の場合には、歯が完全に生え揃わないうちに歯のほとんどが腐蝕しだすといった、まったくひどい状態にあること、そして虫歯には、もっと広範な余病を併発する歯周病が伴いがちであることも、なんら真新しいことではない。実際のところの問題は、一世紀以上も前から歯の専門家にとってまさに頭痛の種であった。こうした虫歯の原因と予防に関しては、入念で根気強い研究や実験がひじょうに多く行われてきたけれども、私が思うには、すでにその問題は解決されてしまったのだと主張するような人はいないだろう。いずれにせよ、依然として歯科医は虫歯の穴を削ったり埋めたりすることに忙殺されているのである。ところが一方では、虫歯はその大部分が栄養不良や欠陥のある食事と関係があるということを示す多くの適切な証拠が蓄積されてきているのである。

未開人がすばらしい歯をしているのに、文明人がひどい歯をしていることを、我々が知るようになってからすでに久しい。
それなのに、文明社会に住む我々の歯が悪くなった原因を究明することばかりに気を取られて、何故未開種族の人々の歯がすばらしいのか考えもしなかったことは、私にはきわめて愚かなことのように思われる。この点、ウェストン・プライス博士は唯一人、歯の病気の原因に関する自らの知識をもった人であるように思える。言い換えれば、この分野の彼を除く一切の研究者は、想像もしなかったことを見せつけられて、思わず自分自身を蹴飛ばしたくなるほど、博士の研究は画期的なものなのである。これは、真に優れた科学者というものは、明らかなる事実を真に評価できる人なのだということを示す一つの良い例である。・・・・・



翻訳出版によせての原稿を書かれた当時の日本大学教授、日本歯科医学会理事、口腔衛生学会幹事長の木所正直先生の原稿を一部抜粋をご紹介したい。
片山恒夫博士は私とは20余年に亙る同学の友人である。片山恒夫氏は開業臨床にあって口腔衛生実践の篤学の士であり、多くの業績を発表され、氏の向学心には常々敬意を払ってきた。

数年前、わが国には多分一冊しかなかったと思われるW.A.Price博士のNutrition and Physical Degenerationを九州大学医学部図書館において発見され、一読してPrice博士の研究の重要さに打たれ、わが国の医師、歯科医師、栄養学を学ぶ人々のためだけでなく、原著者の意の如く、広く一般の人々のためにと完訳出版を決意された。

その後氏の粘り強い努力によって、著者没後の著作権保有者であるプライス・ポッテンジャー財団の理事長G.F.Knight氏から完訳の快諾を得られ、翻訳に着手された。完訳の承諾を得てなどというもの、実は細部にわたっての決定をみるまでには、文章や電話を通じ十数回の連絡の後に得られたものであり、財団も片山博士の熱意に打たれ、資料の提供など日本語版発刊に協力されたと聞いている。・・・・・・

・・・・・・本書の内容は現代の栄養化学書の類でなく、Price博士が十数年にわたり自らの足で調査した貴重な研究業績を基礎とし、追試研究結果の総合集大成であり、貴重な資料として教えられるものである。