【70】職人技     

世界では何世代にも仕事と伝統が受け継がれることは珍しく、日本は老舗が多い国といわれています。

根強い愛用者の声にワープロを修理してくださる方や、壊れたおもちゃをボランティアで直してくださる方の映像をメディアで目にしました。最近は機械や車などはコンピュータで管理されていることが多く、修理となるとユニットごと交換するなどの対処が増えています。人が音を聞きながらあそこかな、ここかなと職人技を駆使して修理するというよりは、ユニット毎の部品の交換を勧められることや、もう部品が無いからと新しい商品への買い換えを勧めることが常のように思います。そうしないと対応できないのも実際でしょうし、買い換えたほうが修理よりコストが掛からないこともあるのでしょう。

仕事上の相棒の機械の故障
先日、長年愛用していた歯面を清掃する機械が故障してしまいました。それは水と洗浄の粉と高圧の空気で汚れを飛ばす(わかりやすく言うと高圧洗浄の機械みたいなもの)ものです。水は出ますが空気が出ません。空気が出ないので粉も出ません。今までにも何度かこういった症状はありましたので、その都度修理をして使っていました。

週末には使う予定がありましたので、またメーカーさんに連絡して修理に出すことにしました。メーカーさんはありがたいことに、修理の間、代替の機械を無償で貸してくださいましたので、お陰様で週末は無事に治療をすることができました。

数日して担当の方曰く「古い機械なので部品がもうなくなっていて修理はできない」との回答が届きました。古い機械とはいえ、ついこの前まで動いていたのに何とかならないものかと思ってしまいますが、新しい機械の見積もりをいただき、直らなかった機械を受け取りました。長年愛用した優秀な相棒です。調べてみたら、なんと22年前に購入したものでした。

素人が一肌脱いでみた結果
こうなったら駄目でもともと、毎日診療が終わってから自分であれこれ動かし、中を調べたり、先端をつついてみたり、超音波をかけてみたりと素人仕事をすること3日。細い針状のもので丹念に先端を突き続けていた瞬間、ズボッという今までにない貫通した感覚……来た!? 急いで電源を入れて、水と空気を繋ぎスイッチペダルを踏むと、シャーっという勢いのある懐かしい音!!! そうです。直ってしまったのです。故障の原因は、おそらく先端に粉が詰まっていただけなのです。たぶん……。

みなさんどのように考えますか。誰かを責めている訳ではありません。社会というのは残念なしくみを生むこともあると理解しつつ、今回は、たまたまラッキーな事例ではありましたが、どんな時もあきらめないことが大切だという意味づけをしたいと思います。

物には原因と結果があるけれど、例えば体の不調の原因も一緒で、答えは一つだけではないかもしれないということです。先日、インフルエンザのワクチンの注射(皮下注射)を打った高齢のご婦人が来られました。注射をした先生が「血管に入ってしまったけれど時間が経てば治ります」とおっしゃったそうなのですが、後から注射したところが痛くなり、いつまでたっても治らないのだと気にしていました。実際ケテルに来院されたときにも痛みがありました。しかし、かみあわせの調整とともに一瞬でその痛みは消失してしまいました。患者さんは目が点になっておられましたが、注射が原因の痛みも、そこが治る環境をかみあわせの調整で作れたということだと思います。

原因をひとつに決めないで他方面からも考え、粘り強く簡単にあきらめるものではないなと思った嬉しい出来事でした。そして、相棒は今も元気に活躍してくれています。これからも大事にしていきたいと思っています。