人に理解してもらいたいと話をするときに、言い方や表現の方法で受け取る側の〝焦点〟が決まるといわれます。
たとえば急カーブの山道などでよく目にする「事故多発」という警告看板。この文字を見たときに、運転手は事故を連想しています。また母親が子どもに「お母さんが帰ってくるまで、このお菓子を食べてはいけないからね」と言うと、子どもはすぐ食べている姿を想像してしまいます。「お母さんが帰ってきたら、一緒に食べよう」と伝えれば、あとで一緒に食べる姿を思い描くようになります。どういうイメージを持つかによって、その人の行動は変わるし、また変えられるということにもなります。人は頭のなかで連想したものに引っ張られる傾向があるからです。
そう考えると、プラス思考、マイナス思考とよくいわれますが、なるべくプラス思考でイメージを持ったほうが、人生は良い方向に流れていくことが多いのではないでしょうか。
今回の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、テレビ各局は毎日のように〝自粛〟の必要性を報じています。しかし同じように自粛を促したとしても、表現の仕方によってまったく反対の行動を連想させる可能性があるように感じます。
他人を思うからこその自粛
歯科ではインプラントなどの手術もおこないますので、そのような場合には本来、大病院の手術室のような環境が必要となります。厳格なゾーン分け(菌が付いているところと、付いていないところ)を明確にしなければならないのです。
コロナの場合も同じで、ウイルスがある場所とない場所をしっかりと区切る必要があります。感染者の多い東京と感染者が出ていない岩手県など、各地域によって温度差はありますが、ウイルスは人が運ぶので、ふたつを線引きするには、やはり動かないことが大切なのです。
この6月号の原稿を書いているのは4月末ですが、このゴールデンウィーク後の状態が、今よりよくなっていることを願っています。
そのためには自分がこれをしたい、あれをしたいということではなく、いつも相手を思って「もし無症状でも、自分が感染しているとしたら」と考え、行動を見つめなおすことが必要だと思います。そのための〝自粛〟なのです。皆さん一人ひとりが今一度、対人関係の基本に戻ってみられたらよいなと思います。未だ解明されていない新型コロナウイルスではありますが、感染した状態であっても、個人の免疫力があれば重症化は避けられるのではないかと考えます。
その免疫をあげるにはどうしたらよいのでしょうか。栄養学的アプローチでビタミンCやビタミンD、マグネシウムなどの補給や、緑茶のカテキンの作用やニンニクなどの健康効果の高いものも大切という考え方もあります。また、逆にトランス脂肪酸や人工的な添加物などは細胞の膜を固くしてしまったり、細胞の代謝に負荷をかけてしまいます。口にする食品にも気をつけなければなりません。
さらには口腔内にすでに感染症があるかないかで、免疫力に大きな違いが出ます。虫歯や歯周病、また目に見えない根尖病巣などがあれば、そこから血管を介して全身に細菌は回ってしまいます。すでにその細菌との戦いがおこなわれているところに、さらにウイルスが侵入すれば、身体が悲鳴をあげてしまうのはいうまでもありません。現在アメリカでは、がんも歯周病などをきっかけとした慢性炎症から免疫が落ちて発症するといわれています。
骨格も歪みがあると、血流が悪くなることによって、免疫低下を助長しやすくなりますので、歯科医の立場からすると、かみ合わせなどのバランスも大切です。また今こそ食生活も基本を大切に、植物性のものを多く摂取し、免疫を上げていくことが必要なのではないでしょうか。